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「えっと……? 最後はセナちゃんかな。お家に送るので良い?」
「あの、お兄ちゃん……一人では不安だから屋敷まで一緒に来てくださいませんか……?」
「構わないよ」
さっきクレアちゃんが教えてくれたんだけど、シュリー家って公爵家らしいんだよね。聞き覚えがあるわけだよ。クレアちゃんはランと一緒に王宮へ送り、俺はセナちゃんと一緒に公爵家に行くことになった。不安が解消されてきたのか最初に話した時よりしっかりした話し方になってるね。少しでも元気を取り戻してくれたなら嬉しいな。
精霊王なのは一応隠してるわけだし、公爵令嬢と一緒にいるとなるとご家族には嫌がられるかもしれないけど、それは仕方ないから許してほしい。
「じゃあ俺の手を握っててね。行くよー」
光に包まれ、一瞬で教えてもらったシュリー公爵邸の門の前に転移するとまさかの門番がいなかった。セナちゃんを探させてて手が回らないとかかな? それにしてもさすが公爵家。大きいお屋敷だねぇ……
「セナちゃん、ご両親は執務室にいるようだから案内してもらえるかな?」
「はい」
あれ、雰囲気が変わったね。薄汚れてたから綺麗にしてあげたんだけどすごく可愛らしい顔をしてるし、思ってたより小さい子というわけでもなさそうなんだね。高位貴族なら基本的に精神年齢も高い傾向にあるだろうし、不安から幼く見えたのかな? 七歳くらいかと思ってたけどこれ多分、十歳くらいではあるよね……?
「シエナ」
「はい、お嬢様。……え、お嬢様!?」
「ただいま。ちょっと話したいことがあるからお父様のところに行ってくるわ」
「か、かしこまりました」
メイドさんかな? 驚いてたけど意外と落ち着いているのを見るにベテランなのかもしれない。それと俺の存在は完全に無視されてた。気付いてなかっただけかもしれないけどー。
「失礼致します、お父様」
「ああ……セナ!?」
「はい。ご心配おかけして申し訳ございません。詳しいことはこれからお話し致しますので、お時間いただいてもよろしいで、」
言葉の途中でセナちゃんのお父上が抱きしめたから驚きで言葉を失っている。家族仲が良いんだね。本当に心配してたようだし。精霊から聞いた話だけどシュリー公爵家はたしか長男次男、それから長女であるセナちゃんの三人兄妹だったかな。だけどお母上も含めて誰もいないね?
「セナ……! 無事で良かった。心配したんだぞ」
「はい……」
その後セナちゃんは怪我などがないか質問責めにされ、少し落ち着いてから行方不明だった理由を話していた。経緯としては護衛と共に街に出ていて、一瞬逸れた隙に誘拐されちゃったらしい。俺のことも聞かれたけどセナちゃんが適当に誤魔化してくれた。やっぱり予想通り十歳だったらしく、だけど精神年齢はもっと高いように感じた。安心できる場所に帰ってきたからか、それともお父上の前で気が引き締まったのか、すごく落ち着いてるんだよね。
「そういうことだったのか……ナギサ様、セナを助けて頂き心より感謝致します。ナギサ様さえよろしければ、是非お礼をさせていただきたいです」
深々と頭を下げるシュリー家のご当主。聞くと、お母上やお兄ちゃん達はセナちゃんを探していたからこの場にいないのだそう。
「そんなに感謝されるほどのことはしてないよ。礼ならひとつお願い、俺のことは秘密にしてて。恐らく俺が人間じゃないことくらい気付いてるでしょ?」
「はい。そういうことでしたら絶対に口外しません。ですが家族には話してもよろしいですか? 絶対に他人に話さないように言いますので……」
「それくらいなら良いよー」
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