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スパッとした口調で完結に答えると、カイル王子は言葉少なにそれだけ言うと、私をエスコートするような仕草をして、パース子爵と私を引き離すかのようにして急いで歩いた。
私は背中に痛い程の視線を感じて振り返った。パース子爵は険しい形相で私を睨んでいた。私がハット子爵夫人で幼いジーンを抱える身だった頃は見たこともないパース子爵の姿だった。
身震いしてゾッとした。
「私はあなたに告白しなければならないことがあるようだ」
突然、カイル王子にそう告げられて、私は彼の横顔を見つめた。カイル王子は何かを後悔しているような悲しげな表情だった。
私は例の薔薇の伝うコテージに案内された。
今度は屋敷の中だ。豪華な調度だが、居心地の良い感じで、夜になると暖炉に少し火がくべられるのだろう。薪もすでに用意されていた。
まだ秋だから、暖炉の火までは必要はない。
それはそれは豪華な昼食の準備が整っていた。
彼は蝋燭を持ってきて、灯りをつけた。昼間だと言うのに。
部屋の中は途端にロマンティックな雰囲気に包まれた。
そわそわしてしまう。
なんだか甘い雰囲気を感じるのは気のせいだろうか。
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