17人が本棚に入れています
本棚に追加
カイル王子は明らかに動揺していた。
顔が赤くなり、視線が私を見つめたかと思うと、パッと上を見上げたり、下を見たり、視線が彷徨った。
「さあ、エミリー、頼みましたよ」
陛下の最後の言葉は実に優しかったと思う。それまで、カイル王子に向けていた表情とは一変していた。
私は少し怖かった。
何が2人の間で会話されたのか、知らない方が良いことだと思った。
国王陛下への挨拶が終わって廊下を歩いていると、パース子爵がやってきた。私をやはり一瞬睨むように見つめた、と思う。
私は小さくため息をついた。
「こちらの方はどなたでしょう?」
パース子爵が表向きはにこやかにカイル王子に尋ねた。
「私の衣装デザイナーです。陛下に報告済みです。今度の社交シーズンの衣装を全てお願いするつもりです」
カイル王子はにこやかに話している。
「パース子爵、こちらがエミリー嬢です。エミリー、こちらがパース子爵です」
「どちらのエミリー嬢でしょう?」
パース子爵が食い下がった。
「ハット子爵家のです。急ぐものですから、失礼。陛下にお願いされたこともございまして」
最初のコメントを投稿しよう!