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1. カラスの葬列
気付けば夕方17時を過ぎていた。ついさっきまで昼頃だったはずなのに、いつの間にか空が橙色に傾いている。
……あぁ、日が沈むのが早くなったのか。
秋の匂いが鼻先を掠めたその瞬間、無理やり張っていた心の糸が、突如ぷつんと千切れる音がした。
ボロボロのサンダル、無造作に切り揃えた髪、最低限の服と日用品しか詰められていないリュック。街中のガラスに透けて写ったそれらが、更に私に追い打ちをかけた。
どうせ、いつか手放す命だ。
遅いか早いかの違いでしか無いのなら、今日でいいじゃないか。遠く、遠くへと思ってここまで来たけれど、何もかも無意味になるのなら、全てを放棄してしまうのが1番早くて楽、だろう。
一度静かになった、右ポケットの中のサバイバルナイフが、再度跳ねるように揺れる。
私は、街の栄えている所から遠ざかるように、人々の流れに逆走して歩き始めていた。
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