ケモミミホームズと灯台下暗し

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ケモミミホームズと灯台下暗し

 家族連れで騒がしい休みの日の動物園。  聡花は、パンダのぬいぐるみやシナモンシュガー味のチュリトスやソフトクリームなど、園内で売ってるものをたくさん持たされていた。 「これだけ買ってやれば、なにか溺愛してる感じになるだろう」 と桐生管理官は言う。 「……溺愛したいんですか?」 「お前の家族の手前な」 と長身の桐生は上から見下すように聡花を見る。  こんな目で私を見る人とは結婚できない……と改めて聡花は思った。  だが、この結婚は家と家との取り決めなので、もちろん、聡花たちの意見なんて、誰も聞いてはくれない。  スーツにロングコートという、いつも通りのいでたちの桐生と並んで、バンダを見た。  横に立つ人は怖かったが、パンダは可愛いかった。  夢の中でこの人についてるの、猫耳っぽいケモミミじゃなくて、パンダの耳でもいいな。  ……より似合わないけど。
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