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(その一年の終わりには先祖の霊や悪霊があの世から帰ってくる。先祖の霊をもてなしたり、悪霊から身を守るために仮装をしたりしていたのか……)
ハロウィンのことなど、風雅は全く知らなかったため「へぇ〜」と調べながら呟いてしまう。日本でこのハロウィンの起源を知っている人はどのくらいいるのだろうか、そう思った時に風雅の肩が指でつつかれる。
「trick or treat?」
悪戯っぽく笑って言った菫の言葉は、ハロウィンの際、お菓子をもらう時に言うものである。当然風雅はお菓子など持っていない。
「菫、お菓子今は持ってないよ」
風雅がそう言うと、菫はニコリと笑った後に風雅のネクタイを掴む。そのままネクタイを引っ張られ、風雅の体が動いた。風雅の目の前に菫の顔がいっぱいに映る。
時が止まったような気がした。互いの唇が触れていたのはきっと数秒ほどだろう。しかし、風雅の胸の鼓動は落ち着くことを忘れたようにバクバクと動いている。顔が真っ赤になり、どこか熱い。
「悪戯完了」
真っ赤になって固まる風雅の頭を撫でながら、菫は笑顔で言った。
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