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第2話 奇術師
「やあ、赤羽根くん。やはり君の方にも届いたのかい」
「こんにちは、警部。いつもごくろうさまです」
赤羽根探偵が蘭華助手と共に屋敷を訪れると、既に警察が来ていました。
責任者の辺周警部は、赤羽根探偵の顔見知りです。何度もフラワー・シーフに煮湯を飲まされており、いわば二人は同志なのでした。
「赤羽根くん、こちらがヒルカワさんだ」
白髪まじりの男性を、辺周警部が紹介しました。ヒルカワ氏は、世界的に有名な日本人マジシャンです。
「こんにちは、お邪魔しております。よろしく」
「こちらこそ、よろしくお願いしますよ、赤羽根さん。名探偵が一緒なら、私も心強い。大船に乗った気分ですよ」
大怪盗に狙われているのに、声にも表情にも、心配そうな様子は皆無でした。
むしろ、後ろに控える女性の方が暗い顔です。彼女が誰なのか、紹介されずとも、赤羽根探偵は理解していました。
蘭華助手と同じくらいの年齢です。知らない者が見れば、ちょうど年齢的にヒルカワ氏の娘と思うかもしれませんが、血の繋がりはありません。ヒルカワ氏の一番弟子である、二代目ヒルカワです。
引退気味のヒルカワ氏に代わって舞台に立つだけでなく、テレビ出演も多いため、世間ではマジシャンというよりタレントとして認識されていました。
赤羽根探偵は、ヒルカワ氏に関わる情報を、あらかじめ頭に叩き込んであります。彼女の本名が山田洋子なのも、もちろん知っていましたが……。
「後ろのお嬢さんも、こんにちは。二代目ヒルカワさんですね?」
平凡な本名よりも華々しい芸名で呼ばれたいはずと考えて、そう話しかけるのでした。
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