ベルフェゴールの肉細工

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 彼は母と向かい合って昼食(彼にとっては朝食だが)をとる。しかし、休日の場合はそうではない。なぜなら、父が家にいるからである。  父は彼を見かけると不機嫌になるので、休日になると彼は父が起きる前の早朝に一階へと降りて食料を確保し、一日中自室でパソコンに向かい合っている。  しばらくするうちに彼はご飯を食べ終わった。母はもうすでに食事を終え、台所で洗い物をしている。彼は静かに席を立ち、二階の自室へと戻っていった。  彼はパソコンを立ち上げ、アニメを見はじめた。サブスクではなく、海外の違法アップロードサイトで。  お金が全くないからではない。貯金は数百万あった。彼は新卒で入った役場を数年で首になって以来ずっと無職なので、節約するにこしたことはないのだ。  しばらくアニメを見ていると夕方六時前になった。そして、そろそろアニメにも飽きてきた。 『もうすぐだ』  待ち遠しそうに彼は小さくつぶやいた。もう何年も誰とも会話していない彼の喉からは、木枯らしのような音しか出ない。  六時になった。と同時に、彼はツイッ●ーをパソコンのブラウザで立ち上げた。ツ●ッターはスマホでもできるが、パソコンのほうがより早く操作できるので、彼はパソコン派だ。 『男性差別を許さない会』  美少女アニメアイコンとともに、ツ●ッターが立ち上がった。これが彼のHN(ハンドルネーム)だ。  牛角が女性優遇キャンペーンをしてるだと!? 許せねぇな!! 彼はカタカタと素早い速度でキーボードを叩き、ツイートした。 『すさまじい男性差別だ。こんな差別主義レイシスト企業は徹底的に抗議しないといけない。』  そうして今度は『牛角』でツイー●を検索。自分と同じ思想を持つ同士たちの発言につぎつぎとイイネを押していく。  「知人(さとし)ぃー! ごはんよー!」  階下から晩御飯の時間を告げる母の声が聞こえたため、彼は活動をいったん中止する。  一階に降りると、憎いあの女がいた。 「は……? 姉貴いるなら先に言えよクソババア!!」  久しぶりの姉の姿を見て彼は激高し、母親の胸ぐらをつかんだ。母の『ごめんなさい』というか細い声と、姉が血相を変えて父を呼びに行く足音。  彼がこぶしを振り上げた瞬間 「やめんかいこの石潰しがァ!!」  父がこぶしで彼を殴った。彼は鼻血を出して床に転がった。カーペットに少し鼻血がついて、母が苦い顔をした。
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