ニセモノのお化け中でホンモノが

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    「うらめしや……」 「きゃあっ!」  いつものように、通りかかったお客様の一人が怯えてくれました。今回はカップルではなく、数人のグループのお客様です。 「おっ、凄いな!」 「まだ稼働してる部分もあるんだね。電源はどうなってるんだろ?」  驚かなかった者たちが、そんな言葉を交わしています。  彼らの『電源』という言葉で気づきましたが、そういえば、今日は照明が消えていました。元々お化け屋敷なので薄暗いにしても、もう『薄暗い』を通り越して、完全に真っ暗なのです。  彼らは懐中電灯みたいなものを手にしていました。私の知る『懐中電灯』とは違って、ひらべったい長方形です。  そして照明の他にも、違和感がありました。『稼働』と言われて気づいたのですが、唐傘お化けが出てこないのです。作り物だから、怠けるという概念はないはずなのに……。  困惑した私は、少しでも事情を理解するために、彼らの話にさらに意識を向けました。 「でも、これで来た甲斐があったね! 何もなかったら、馬鹿みたいだもんね!」 「どうせ暇潰しだから、俺は何も期待してなかったけどな」 「とりあえず、面白いネタにはなるぞ。帰ったら早速、廃墟探索サイトの掲示板に書き込もうぜ!」 「『三年前に閉園した遊園地、打ち捨てられたお化け屋敷に本物の幽霊が!』みたいな感じだね!」 「おいおい、『本物の幽霊』は大袈裟だろう」 「ハハハ……!」  私一人を残して、彼らは笑いながら去っていきました。    
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