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青く澄んだ冬空の下。
シックなベージュのコートを身に纏い、わずかに頬を紅潮させながら、竹宮花澄は閑静な住宅街を歩いていた。
ちらりと腕時計に目をやって、小さく首を振る。
「うん、大丈夫。約束の時間には、ちゃんと間に合うわ」
彼女が向かう先は、交際相手の自宅だ。
結婚紹介所で知り合った糸川紀明は、花澄よりも七つ年上。学生時代の恋愛ならば考えられない年齢差だが、二十九歳の今の自分にとっては許容範囲だろうと考えていた。
今風のイケメンとは少し違うものの、切れ長の目やスーッと通った鼻筋など、顔立ちは整っており、背も高い。一流の大学を出て、一流の商社に勤めているという。
ただ一つ、子持ちのバツイチなのは、大きなマイナスポイントだったが……。
それでも自分には勿体ないくらいの優良物件に思えて、彼と付き合い始めたのが三ヶ月前。これまでは外でデートするばかりであり、今日が初めての自宅訪問だった。
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