4人が本棚に入れています
本棚に追加
朝。
自分の横にあのモフモフとした手触りはない。体を起こしてメガネをかけて探すがあの白いきつねはいない。心配になる。鍵も開いてないから玄関から出たわけではなさそうだしまさかベランダ? と慌てて行き、窓を開けるがいない。鍵もかけていたから出るわけではない。
ふとシャワー室からシャワーの音が聞こえる。お風呂のガススイッチの電源がついている。寝る前には必ず切っているからおかしい。
誰かいるのか……。あのモフモフキツネが自分でシャワーなんぞ浴びるわけない。まさか泥棒? 思いっきりシャワー室のドアを開けた。
「ふえぇええええええええ」
シャワーの栓が止まった。梨々花は腰を抜かした。
見知らぬ男の裸体の後ろ姿。頭から踵まで濡れてホクホクと湯気が立っている。雫は垂れていく。
そしてその人は振り返った。梨々花を見下ろす。
「あ、シャワー借りたで」
関西弁? そして不敵に笑うと覗かせる八重歯。
目はあの白いモフモフキツネと同じく細く吊り上がっていた。
「キャァあああああああああああ!!!」
梨々花は声をあげてしまう。男は口を塞ごうとシャワー室から出る。もちろんスッポンポンもろだし。(言い方)
彼女は一度立ち上がるが滑って転んでなおかつスカートを履いていた為パンツ丸見え。しかもよりによって今日はピンクの後ろだけスケスケのやつである。誰に見せるわけでも無く。
すると梨々花の後ろで
コーン!
と哭く声がした。
ふと振り返ると……
あの白いモフモフのきつねがいたのだ。
「えっ、どこ行ってたの? きつねさん……さっきの変質者は?」
やはりモフモフが堪らなく可愛くて梨々話が手を伸ばそうとした。
すると先程ふと開けたベランダの窓に向かってきつねが全速力で走り抜け5階の高さから飛び降りたのだ。
「き、きつねさーん!!!」
……外は暗くて見えない。
「こんなところから飛び降りて……なんだったの?」
そんな不思議な出会いから始まった物語である。
最初のコメントを投稿しよう!