第六話

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第六話

 どこをどう走ったかわからないのだが梨々花はとあるコンビニの前なたどり着いた。 「お水飲みたい」  ずっと何も飲んでいなかったことに気づいた。  見たこともないコンビニだが、きっと昔ながらの酒屋がコンビニになったのだろうという感じはする。薄暗く光っている。 「梨々花ちゃん、逃足早いな」 「走るのは早いんです……てか水飲みたい」  とコンビニを指差す。  コウと由貴はそのコンビニを見て2人見つめ合う。そしてコンビニに入る梨々花についていく。 「2人もよかったら何かいかが? お腹すいたでしょ」 「お、おおきに。じゃあ菓子パンにしよかな」 「私も菓子パン好きです」 「ほんまか。どれがええかの」 「なかなか今じゃ見かけないパンだけど美味しそう」  と2人で菓子パンを漁ってるさなから2人を壁にしてスマートフォンで何かを撮影していることに気づく。 「ねえ、由貴……何を撮影してるの?」  するとコウが梨々花の唇に人差し指を置かれた。  ドキッとする梨々花。でもコウの顔はタイプでない。 「黙ってカップル演じてくれ」 「カップル?」 「ああ。そして今はなるべくレジを見るな」 「え?」  梨々花は何が何だかわからないがコウの芝居とやらに付き合うことになった。 「うまそーやな、おーこのコーンパン。絵柄がキツネでコーンにかけてるんやな!」 「そ、そうね。コーンって……あ、そいえば稲荷寿司とか売ってないかしら? お揚げ好きよね?」  と梨々花はおにぎりコーナーに行こうとするとコウと由貴は慌てた。 「そっち見るな!」  そうだった! と梨々花が見た時にはすでに遅し。  店員がいるとはわかっていたがその店員がなぜか異様な形をしているのだ。 「……ど、どういうこと? ねぇ、今はこれはわたしみえるモードになってるの?」 「強力すぎてモードになってなくてもみえるようになってるだけや! 伏せろ!」  コウが梨々花を体当たりで抱え込んで伏せさせると、その店員らしい塊が伸びて襲ってきたのだ。 「ひぃーっ。て、コウ?」  コウは梨々花の上に乗っかり、彼女の豊満な体を抱きつつも何かを耐えているかのように鼻息を荒くする。 「やばい、やばい、いまキツネになったらあいつに敵わん!」  と言いつつも梨々花を商品の影に座らせ立ち上がった。由貴もカメラを持ちコウと店員らしい何かを撮影している。  店員らしい何かは動き首が割れたかと思うとたくさんの首が出てきた。男性女性、老人2人、子供と赤ん坊の頭。そして犬まで出てきた。 「梨々花ちゃん、引きが強いで! ここは一家心中をしたコンビニや!」 「はぁー!? まだ宝くじ当たったことないのにぃここで引いちゃったー!」 「例え上手い! 由貴、今のも採用してくれ」  由貴はグッ! と親指を立てる。 「いや、撮影よりもなんとかしないと!」  と梨々花は狼狽える。もう脇汗どころではない。 「大丈夫や! 俺が梨々花ちゃんを守る!」  とコウが左手を構える。どう見てもこの構えは某少年漫画の必殺技の……と、梨々花は言いそうになった。  左手の人差し指を相手に向かってこう言った。 「もうええかげんにせぇ。本当はこのコンビニも後日取材予定やった。店長である爺さん。調べさせてもらった。コンビニ経営詐欺にあって自分たちでどうにもできなくなったあんたは口上手く息子家族も巻き込んでコンビニ経営させて案の定失敗して火の車。赤ん坊子供まで巻き込んで……心中よりも殺人や、あんたのしたことは! なのにまだこの世に居てなおかつ俺の恩人で大好きな梨々花ちゃんをびびらせて! 許さんでっ!」  と早口で捲し立てるコウ。  幽霊というより化け物は怯んだがまた何かを伸ばそうとした時。 「とっとと成仏せぇっ!」  とコウが目を吊り上げて歯を剥き出しにして叫ぶと化物は雄叫びをあげて光を放ち消えていった。  梨々花は何を見たのか全くわからない。そして……。 「ここ、どこ?」  さっきまでコンビニであった場所が空き地になった。 「コンビニの跡地。ここに家建てたい物好きおってな。ご依頼きてたからちょうどよかったわ。はよご祈祷代もらえるで!」 「うえい!」  コウと由貴はガッツポーズ。 「梨々花ちゃん、よかったらその金でお礼のご馳走……あれ?」  梨々花は泡を吹いて倒れていた。
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