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DEPRESSION
パタパタと雨の降る音がする。ふと横に視線を向ければ、窓に水滴が付いている。読書に夢中になっていて気付かなかった。どうりで、朝から曇りで怪しい天気だったのだ。
なんとなく窓の外を眺めてボーっとしていると、視界の端に人影が映り込んで来た。特徴的なボサボサの黒髪で、すぐに誰だかわかる。
目の下に見事なクマを作った顔に挨拶をする。
「おはよ、レシオン」
「おはようございます…ソカさん…」
「…また、ルチュ姉さんにでも酒飲みに付き合わされてた?」
「えぇ…まったく…痛た…」
頭でも痛いのか、こめかみを押さえながらレシオンが呆れたように返事をする。いつも以上に顔色が悪い。よほど長い時間、ルチュ姉さんの相手をしていたのだろう。
「レシオンも大変だねー」
「他人事のように言わないでください。まったく…これも不眠症の所為ですね…」
レシオンの言葉に、「眠剤は?」と聞きそうになったが、その問いかけは喉の入口に達したところで飲み込んだ。ある程度想像できたからだ。なので、それを踏まえた上の言葉を投げかけておく。
「あんまりたくさんの量を頻繁に使ってると身体に毒じゃない?」
「そうですね…ですが、そうでもしてないと落ち着かないのですよ」
「依存しちゃってんね、かなり」
「ええ。ソカさんも人の事言えませんが」
さりげないその言葉は、僕を少し動揺させた。多分、僕の目は泳いでいただろうし、その言葉の主の彼もそれを見逃さなかったのだろう。じっとこちらを見つめている。
…隠しているつもりでもバレているもんなんだなあ…とか思いつつ、誤魔化すに誤魔化せない相手なので素直に認めることにしよう。
「あ、バレてた?」
「バレバレですよ。俺達には、ですが」
「あっちゃー、割と上手く繕ってるつもりだったんだけどー!?」
少々おどけたような雰囲気を乗せて言葉を紡ぐ。こうでもしないと、落ち着いて話したりなんてできない。
…レシオンは冷たい目でこちらを見てくるけれど。こないだの助けを求めていた見苦しく情けない姿はどこへやら…。
「…何か失礼なこと考えてらっしゃいますよね?」
「いっやー??べっつにぃー?考えてなぁーいですけどぉー」
「わざとらしくて笑えてきますね」
「その割には目が笑ってないナァ?ボクは君にはもっと笑っててほしいナァ?ナンチャッテ」
「おじ構文辞めてください、というか古いです」
冷たく吐き捨てられた。というか、衝撃の事実がおまけに付いてきた。
「え。うそ、これ割と習得に時間かかったんだけどー!?」
「容量がコンパクトなようですね…持ち運びしやすそうです」
「褒め言葉のようで貶している!一流の嫌味!さすが毒舌生成器!!」
「それこそ貶していませんか?」
朝っぱらからギャーギャー騒いでいると、さっき起きてきたらしいリュエンに「うるせぇ」と一蹴された。なんと悲しき…。
「泣き真似はしないでくださいね。目障りです俺らの視力が低下します」
「眼科プラス耳鼻科にも行かなきゃなんなくなるからな…」
「辛辣デュエット辞めてよガチで泣くよ」
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