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三週間ぶりに教室に来たと思ったら、凛々子は妙なお面をつけていた。狭い額の下の落ち窪んだ眼は殆ど陰になっており、鼻は鮮やかな赤いラッパ水仙のようで、その鼻筋の両脇にはパステルブルーの扇が広がっているみたいな面だった。
「マンドリルよ」
と彼女は言った。そんな珍奇な面をつけた、小さな薄い身体の主が凛々子だとわかったのは、その甲高い声と、極彩色のワンピースと、鮮やかな黄緑色のランドセルのおかげだった。
彼女はいつも、どこで手に入るのかわからないトロピカルな衣服を身に付けていた。そして蛍光グリーンのランドセルを、宝物のように大切にしていた。
「大切なのは自分をよくわかっていることよ」
凛々子はよくわたしに向かって、得意げにそんなことを言って聞かせた。そう言う彼女が、本当に自分をよくわかっていたのかは、怪しいところだと今は思う。結局のところ彼女は小学二年生だったのだし、人間が自分のことをよくわかるようになることは、たぶん半永久的に無い。
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