極彩色のサボテン

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 わたしはそのサボテンを引き取って育てた。べつに大したことはない。窓辺に置いて、時々埃を払い、偶に霧吹きで水をやる。半月くらい存在すら忘れることもある。ふと見ると白い花が咲いている。気がついたら図体が大きくなっていて鉢が窮屈そうだった。  サボテンを植え替えながら、凛々子のことを考えた。大人はサボテンを育てるみたいに、彼女を放っておけばよかったのにね。そんなことを思った。  凛々子は今どうしているだろう。一度踏み潰された彼女の芽は、それでも、どこかから必ずまた陽の光を求めて伸びてきた筈だ。彼女は自分でそれを育てただろうか。それとも、よき理解者が現れて、きちんと育ててくれただろうか。  いつかまた会う時を思って、自然に笑みがこぼれる。わたしは静かに土を(なら)した。
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