第3話 幼馴染

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第3話 幼馴染

「「レインー居るか?」」 幼馴染のカーベルが玄関先に来ていた。 「あら、カーベルじゃない。遊びに来たの?」 「なあローレライ、最近アイツ変じゃないか?」 「変って?」 私はドキッとした。 告白されてから、レインの元気が無くなってしまったからだ。 多分私の返事の仕方が悪かったのだろうか。 でも正直に話すしかなかった。 「なあ、一体何が…」 「何ナンパしてんだ」 奥からレインが姿を現した。 まだ少し顔色が悪い。 「ナンパなんかしてねえし」 「あら、お客様ですか。今日のお勉強はどうしますか?」 家庭教師のフィリアさんが杖を持って玄関に来ていた。 今日も魔法の勉強の予定だった。 「別にカーベルと約束してたわけじゃないし、いつも通り勉強しよう」 「え?ひっでえ~。まあ、終わるまでここで待ってるわ」 私たちは庭で魔法の練習をする事にした。    * 魔法の練習が終わり、カーベルが居るというのにレインは自室に入ってしまった。 遊ぶ気にはならないらしい。 「実は…」 私はレインから告白されたことを話した。 カーベルもレインの事を心配していたみたいだから。 「私もレインの事好きだったら良かったのにな」 「ローレライ、レインの事好きじゃねえの?」 「弟としてなら好きだと思うけど、よく分からないわ。貴方だったらどう答える?」 「難しい問題だな…」 ローレライ(まえのわたし)は好きだったかもしれない。 でも今の私はそうじゃない。 「好きだったら良かったのに」とどうしても思ってしまう。 「今のままで良いんじゃねえか?多分レインもそう思うだろうし。…っていうかお前ら魔法学校の入学試験なんだろ?それ、悩んでいて大丈夫なのか?」 一か月後に入学試験が迫っている。 一応本は勉強しているけど…。 「私は、多分大丈夫かな…」 「ちょっとオレ、レインの所行ってくるわ」 カーベルはレインが心配になったのか部屋をノックしていた。 ドアが開かれたので、入れてもらえたようだ。 レインの事はカーベルに任せよう。 男の子同士だし何とかなるでしょ。 **カーベル視点 オレはレインの部屋に入った。 「お前大丈夫か?」 「あはは、心配してくれてどうも…」 レインは顔色が悪い。 何をそんなに悩んでいるんだか。 「ローレライの事はオレに任せてくれていいから」 「それ、どういう意味?」 「お前の事は弟としか見れないって言われたんだろ?それで諦めるのか?だったらオレが付き合うって言ったんだよ」 「…嫌だ」 「何だって?」 「「嫌だって言ってんだよ!」」 レインの顔色が良くなってきた。 怒って顔が赤くなっているようだが。 「元気あるじゃねえか。ローレライが心配してたぞ」 「カーベル、今のわざと?」 「さあな。まあ、勉強がんばれよ。嫌われてないんだから、彼女に好かれるように努力すればいいじゃねえか。それよりも先に試験か?じゃまたな」 手を振って、オレは部屋から出た。 全く世話の焼ける幼馴染だぜ。 *** 試験当日。 私とレインは馬車で「アルティナ王国魔法学院」に向かっていた。 試験勉強はしたけど自信が無い。 レインはすっかり元気になったようだ。 ゴトゴト・・。 私たちは馬車に乗っていた。 「姉さん。顔色悪いけど大丈夫?」 「実は、緊張して胃が痛いのよね。レイン、試験落ちたらごめんね。気にせず学校に通ってくれていいわ」 「何言ってんの。姉さんが行かないなら僕も行かないよ」 「ありがとう」 彼の一言が嬉しかった。 一応、フィリアさんは大丈夫だろうと言ってくれたけど。 異世界に来ても試験とかって勘弁してほしい。 試験っていうものはどうも苦手なのよね。    * 数日後―——。 「アルティナ王国魔法学院」から手紙が屋敷に届いた。 恐るおそる封を開ける。 「合格」の文字が目に入った。 私とレインは無事試験に合格できたみたい。 ひとまずホッとした。 「良かった…」 「だから大丈夫だって言ってたじゃないか」 私はリビングのソファに沈み込んだ。 室内には、私とレイン、フィリアさんが居る。 魔法の実技はあまり出来なくても大丈夫だったらしいけど、筆記試験が自信が無かった。 記憶が抜けている所為で言葉が解らない所が多かったのよね。 多分ギリギリ合格できたのかもしれないわ。 「ローレライさん。貴方は他の方より魔力は多いので、自分に自信が付けば魔法ももっと上手に使えるようになると思いますよ?」 「フィリアさん…」 「レインさん、ローレライさん、今日でお別れですが、また何かあったら気軽に呼んでくださいね。普段は冒険者ギルドに居ると思いますので」 「「ありがとうございました」」 私とレインはフィリアさんにお礼を言ってお別れした。 三か月、彼女に魔法を教わった。 レインは元々器用だからなのか、基礎的な魔法は直ぐに出来るようになった。 私は火を灯すのがやっとだったけど。 今度会う時は、私が魔法をちゃんと使えるようになっていたら良いわね。 一緒に冒険なんかしちゃったりして。 レインと私とフィリアさんと。 想像してみたら…意外と楽しいかもしれないわ。 「うふふ。それも悪くないわね」 「姉さんどうしたの?随分と楽しそうだね」 「うんとね。フィリアさんと、将来冒険者として一緒に組むのも楽しいかもって思ったの」 「そっか。じゃあ、学校で魔法のお勉強頑張らないとだね」 *** 「そういえば俺のいとこが学校に入るらしいね」 金髪で緑色の瞳、白いマントを着た青年が椅子に座り頬杖をついている。 「ケリー、慎重に事を進めてくれ」 「わかってるよ父上」 「シルダも用心してくれ」 「承知いたしました」 ケリーの後ろには銀髪の女騎士シルダが控えている。 「要するに城に連れてくれば良いんだろ」 父上と呼ばれた壮年は金髪で頭には王冠が乗っている。 セファース・フォン・ラクシアはため息をついた。
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