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放課後、律はふと窓の外を見つめていた。机の上に広げられた教科書やノートが無造作に散らばっている中、彼は何度も繰り返し、綾人のことを考えていた。すぐ近くにいるのに、どうしてこんなに遠く感じるのだろう。
その時、クラスメートの一人が律に声をかけてきた。
「関口、何ぼーっとしてんだ? 課題、終わらせる気あんの?」
律ははっとして顔を上げると、他の友達が笑っているのに気づく。返事をしながらも、視線は無意識に隣の席に座る辻に向かっていた。今日は、昼休みからずっと一緒に過ごしているのに、心の中ではまだ何かが引っかかっていた。
そんな中辻は、相変わらず静かに自分のノートに目を通している。放課後になっても、友達と談笑したりすることもなく、黙々と作業に没頭している様子が、律にはどうしても目についた。
「辻、集中してる中ごめん。屋上来ない?休憩も必要だろ。」
律は自分でも驚くほどに、突然そう声をかけた。あまりにも自然に出てしまったその言葉に、自分で少し驚いたが、辻は一瞬顔を上げ、手にしていたノートを閉じると立ち上がった。
「屋上か、いいね。俺もちょうど集中力切れてたから助かるよ。」
彼の答えはいつものように淡々としていたが、律はその返事に心の中で少しだけ安堵を感じる。彼が自分の提案に応じてくれること自体、少し嬉しかった。
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