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君と僕が初めて出会った楓の木の下でまた会おうと君は言った。
君と僕、互いに夢を叶えたその時に再開して喜びを分かち合おうと。
君は僕を置いてどんどんと夢に近づいていき、そうして先に夢を叶えた。
僕は何度も何度も挫折と再起を繰り返してようやく夢を叶えた。
長い年月を経て、僕は約束の場所にやって来る。紅く染まった楓の木の下へ、僕は君が大好きだったコスモスの花束を持って。
だけど、待てど暮らせど君は来ない。……それは、分かってたいたことだ。
僕は君のいる天へ向かって花束を投げる。
重力に従い地面へドサリと落ちた花束を見ていたら涙が溢れてくる。もう枯れ果てたと思った涙がとめどなく溢れる。
紅色の絨毯の上に両膝をついてわんわんと泣いた。
約束の場所へ君は来ない
君のいる場所へ僕も行きたい
君に会いたい、君に会いたい
その時、君の声が聞こえた。
──やっと叶えた夢だよ、生きて頑張らないと
僕はハッとして楓を見上げる。穏やかな風に揺らされ、葉がさわさわと音を立てていた。
僕は涙を拭いて立ち上がる。そして君に届くように言うんだ。
「また来年もここへ来るよ」
《終》
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