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<7月になって>
サツマイモ係りに選ばれた瑞希は、先生に葉っぱが沢たくさん出たことを報告。
先生から葉っぱの数を「どれくらい?」と聞かれたときに、瑞希は「たくさん」と答えた。
先生は、瑞希が10枚以上を数えることが面倒な性格である事を承知していたので、それを聞いて
「順調だね」と微笑んだ。
翌日、瑞希は
「もっともっと葉っぱ、増えろ~」
と、日の丸の旗を振って応援をした。スポーツ番組をテレビで見た時の応援風景を真似てみたのだ。
瑞希がふと隣を見ると、仲良しの郁ちゃんが瑞希を真似て白いハンカチを振っていた。
「郁ちゃん、それはさようならだよ」
賢い瑞希は、郁ちゃんにその意味を教えてあげた。
お芋は、すくすく育っている。瑞希はそれを見て「いいぞ、いいぞ」と思うと、興奮で身体が震えてしまう。
それを見た郁ちゃんが「寒いの?」と言って、そっとその身体を後ろから抱きしめる。
その日は今年一番の真夏日であった。
<8月のこと>
幼稚園は夏休み。それでもサツマイモ係の瑞希は、毎日のように幼稚園裏のサツマイモ畑に様子を見に行った。
するとある日のこと、晴天が続いたせいか畑が乾燥し苗が萎れ始めているのに気が付いた。
瑞希はそれを直ぐに先生に連絡。その後、幼稚園の近所に住む園児とお母さんたちで畑に水を撒くことに。
瑞希も小さなバケツに何度も水を汲んで、畑に水をあげた。
しかし、同じイモにばかり水をやり過ぎてしまいお母さんに「もういいよ」と言われ、バケツを取り上げられてしまった。
その時郁ちゃんは水をやらずに棒にちり紙を貼りつけて、ひたすらに振り続けていた。
「何してるの?」
瑞希がそう聞くと、雨乞いをしているとの事だった。
瑞希はその時、郁ちゃんは肉体労働が嫌いなのだと知った。
畑に水を撒き汗を一杯かいた瑞希は、イモの苗に負けないくらいに沢山の水を飲んでしまう。そのせいか、その日お腹を壊してしまった。
瑞希は、その時同じおイモさんにばかり水をあげると、おイモさんもお腹を壊すのだと悟った。
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