0人が本棚に入れています
本棚に追加
< 9 月 に>
「あれっ?花が咲いてる」
淡い紫色の花が咲いているのを瑞希は発見した。
「きれい、きれい」
瑞希は手をたたいて喜んだ。
間も無く小さなイモが実り始めると思った瑞希は、一日に何度も畑に出掛け様子を見に行った。けれど一向におイモの姿が見付けられない。
心配になった瑞希は、先生に聞いてみることにした。
「先生、お花が咲いたのにお芋さんが生らないよ」
すると、先生は
「お芋さんはね。土の中で大きくなるの。でもまだ、土を掘ってお芋さんを起しちゃダメよ。途中で起こすと大きくならないからね。寝る子は育つのよ」
そう、教えてくれた。
「あっ、そうだった」
瑞希はそれを聞いて、自分が春からイモ掘りを楽しみにしていたことを思い出した。地上に実ってしまっては、イモ堀は出来ないのである。
その日の瑞希は晩御飯の後、直ぐに眠りに就き、翌朝パパに身長を計ってもらった。
しかし、全く育ってはいなかった。
それから瑞希はストローを土に刺し、おイモさんに話し掛けることにした。「が・ん・ば・れ!」「大きくなれ!」「美味しくなれ!」と。
一方、郁ちゃんは両手で土を揉んでいた。
どうやら郁ちゃんは、マッサージをするとイモが元気になると思ったらしい。お父さんのように。
最初のコメントを投稿しよう!