イモ堀り会

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イモ堀り会

…10月  苗を植えてから4カ月と数日が経ち、葉もすっかり黄色く色づいた。  いよいよ今日は収獲、「イモ掘り会」の日である。  既に保護者により蔓を切り終えたイモ畑で、園児たちは先生の指示に従いイモを掘り始める。  瑞希も土を掘り始めた。  掘って掘って、掘りまくる。そしていくつものサツマイモを掘り出し、ついに至極の一本を見つけるに至る。  それは、瑞希の隣で掘っていた郁ちゃんも腰を抜かすほど見事なサツマイモであった。  根元の方に細い根が、あたかも毛が生えているかの様にたくさん有ったことは奇妙ではあったが、芋自身は太くて長く見事なまでに育っていた。  それを他の芋と並べてしげしげと眺める瑞希。  その様子を少し離れた所で見ていた中年と呼ぶには少々早い女性の先生が感嘆の声を上げ、瑞希に近づいて来た。 「うわぁ~、瑞希ちゃん大きいお芋さん掘ったわね」 「これ、パパ」  瑞希はそれに”パパ”と名付けたようだ。 「そう、パパなんだ。じゃあ、その隣の少し小さい芋はママかな?」  そう先生が聞くと、 「ママじゃないよ、ママには芋が無いの。芋を持ってるのはパパだけ」  それを聞いて、その意味の深さを汲み取る先生。 ”もしかして、あの瑞希ちゃんのイケメンパパは、この芋の様に毛深く大きくて、中太ってことなの?”と。  そう想像すると、ついそのパパ芋に愛着を抱いてしまう先生。  掘った芋は各家庭2本ずつ持ち帰り、残りは先生が集め後日その芋を蒸かして園児たち皆で食べることになっている。  しかし、そんな先生の様子をしげしげと見ていた郁ちゃんが瑞希に耳打ちすると、瑞希はそのパパ芋を持ち帰らずに、先生に託すことにした。  なんとなく郁ちゃんの話を聞いて、瑞希も先生の気持ちが分かる気がしたのだ。何となくだけど…  その後、先生はコッソリとその芋だけを自宅に持ち帰ったのだが、そのパパ芋を美味しく味わったのかどうかは不明である。 <おしまい>
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