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息子は酷く後悔したのと同時に、自分を呪った。何故なら、その生徒が自分に心を開いてくれたのに、その生徒の苦しみに、気付いてやれなかったという自責の念に駆られたからだった。
その生徒は、弱さを見せなかった。自分の話をちゃんと聞いて、自分を信じてくれた息子(生徒にとっては先生だが)に、ずっと笑いかけてくれていたのだ。その笑顔の裏に、自殺をしてしまう程の苦しみを、抱えているなんて、きっと、思いもしなかったのだろう。
生徒を救えなかった自分を責め、教師を辞めてしまった。そして、部屋から出られなくなってしまったのだった。その苦しみはずっと、大きくなるばかりで、殴り書きのように、自分を責める言葉が、日記にははきだされていた。そして、息子はとうとう、自らの命を絶ってしまったのだ。
遺された人の気持ちを知りながら、それでも、生きるを選択する事が、息子にとっては何よりも苦でしか無かった。
木田さんは息子の日記を読み終えると、大きなクマのぬいぐるみに、息子の服を着せた。
「大事な生徒さんが亡くなられたのは、凄く辛かったわよね…。あなたは、優しい子。だから、救えなかった自分を責めてしまったのよね…?でもね、きっとその生徒さんは、あなたに話を聞いてもらえて、救われたんじゃないかしら?」
そう言って、クマのぬいぐるみ抱き締め、優しく頭を撫でる。
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