いつまでも大切な宝物【完】

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母は今日も、いつも通り仕事に行き、夜6時頃帰宅。どうやら息子は、朝ごはんは食べたようだが、お昼は食べなかったのだろう、冷蔵庫にはパンが残っていた。 母は、朝だけでもちゃんと、ご飯を食べてくれた事に嬉しさを感じた。そして、軽く息子の部屋のドアをノックする。 コンコン いつものように無視されてしまうが、母は一言、 「開けるわね?」 と言って、そっとドアを開けた。息子は決して、"入るな!"と、怒鳴る事は無く、ただ、いつものように布団の中に潜っていた。 「ただいま。朝ごはん、ちゃんと食べてくれたのね。お母さん嬉しいわ。ありがとう」 そう言って、優しく微笑むと、また、そっとドアを閉めた。そして、晩ご飯の準備をして出来上がると、お盆の上に乗せ、息子の部屋に持って行く。そっとドアを開け、丸いテーブルの上にお盆を置くと、また、そっと部屋を出た。 いつかまた、息子が部屋から出て、一緒にご飯を食べられる日が来ますように。そう、母は願いながら、ダイニングテーブルの椅子に腰掛けると、手を合わせ、"いただきます"と呟いた。
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