いつまでも大切な宝物【完】

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それから数日後の事。お隣に、30代くらいの女性が、小学生の息子と共に引っ越して来た。名を、工藤さん、といった。 「隣に引っ越して来ました、工藤と言います」 工藤さんは引っ越しの挨拶にやって来た。 「あ、木田です」 引きこもりとなってしまった息子を持つ母、木田さんは笑顔で、挨拶を返した。工藤さんは、自分の後ろに隠れている、小学生の息子も紹介した。木田さんは優しく、工藤さんの息子に、"こんにちは"と声をかけ、その後、工藤さんに、"私も息子居るんですよ"と、少し、息子の自慢話を始めた。 工藤さんも、息子を溺愛しており、息子の自慢話をする木田さんとはとても、気が合い、2人が仲良くなるのに、そう時間はかからなかった。 工藤さんが隣に引っ越してから、数週間後の事。朝、ゴミ出しに出た際、ちょうど木田さんとバッタリ会い、工藤さんはずっと疑問に思っていた事を聞いてみた。 「木田さん、おはようございます」 「あ、工藤さん。おはようございます」 「あの、息子さんと一緒に住んでるんですよね?でも、私、まだ一度も、息子さんの姿、見た事がなくて…」 そう。工藤さんの疑問はそこだった。
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