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木田さんの息子が実家を出ているのなら、工藤さんが見かけなくてもおかしくないのだが、木田さんの息子は、実家暮らしだと聞いていたので、ずっと不思議に思っていたのだった。
「失礼ですけど、もしかして息子さん、ご病気か何か、とかですか…?入院されているとか…」
工藤さんは心配した顔で、木田さんに問いかける。すると木田さんは何処か悲しそうに、首を左右に振った。
「…いいえ。家には居るんですけど…」
「何か、あったんですか…?もし宜しければ、お話、聞きますよ…?」
工藤さんは、精神科で働く看護師であった。その為、何かに悩んでいる事があるのなら、少しでも何か、力になりたい、そう思ったのだった。木田さんは、そんな工藤さんの優しさに、"ありがとうございます"とお礼を言って、"実は…"と、話し始めた。
「引きこもり…。そう、だったんですね…。あの、もしご迷惑でなければ、一度、息子さんにお会い出来たらと思うのですが…」
「そうですね…。母親以外と話す事で、少しは気分転換になるかもしれないですもんね」
そう言って、木田さんは、快く工藤さんを家へと招いた。
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