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息子の部屋の前、木田さんは優しくドアをノックする。
「今、いいかしら…?あなたにね、会いたいって方が居るの」
息子はやはり、目は覚めてはいるものの、布団の中に潜ったまま、無視をする。
「ごめんなさいね…。起きてはいるんだけど、返事してくれなくて…」
「…いえ」
「…開けるわね?」
そっと、ドアを開け、部屋に入る。息子は、"入るな!"と、怒鳴る事はなかった。
「隣に住んでる、工藤さんよ。工藤さんね、精神科で看護師をされているの。ほら、他の人と話す事で、もしかしたら、少しは気分転換になるんじゃないかって、そう思ってね?あ、工藤さん。私はリビングに居ますから」
木田さんはそう言うと、そっと、部屋を出て行った。工藤さんと2人きりになった息子。けれど、なかなか布団から顔を出そうしない。というより、少しも動きさえしない。
気になった工藤さんは、そっと声をかける。
「工藤です。あの、起きて、いらっしゃるんですよね…?もし良かったら、顔を、見せて頂けないかな、と…」
工藤さんの問いかけにも、返事は無い。だんだん不信感を抱き始めた工藤さんは、そっと、布団に手を伸ばす。
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