いつまでも大切な宝物【完】

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工藤さんは、木田さんの怒った姿に、思わず息子の部屋を後にし、リビングを見渡す。そして、息子の部屋とは別に、もう一つの部屋に目を向けた。その部屋は、木田さんの部屋だ。工藤さんは躊躇いながらも、木田さんの寝室のドアを開けた。すると……。 「……息子さんは、亡くなられたんですね…。だから、多分、息子さんが一番気に入っていたであろう、あのぬいぐるみを、息子さんの代わりにした…」 工藤さんは、木田さんの寝室にあった、一つの仏壇を見つめながら、そう言葉をこぼした。木田さんの息子の写真が、そこにはあった。 「……違う。違うわ!息子は生きてるの!死んで無い!引きこもりになっちゃったけど、でも!ちゃんと生きて!私の傍に居てくれてるの!」 息子の死を受け入れられず、息子の一番のお気に入りであった、あの大きなクマのぬいぐるみを、息子とした。 周りからしたら、ぬいぐるみという名の"ニセモノ"の息子であり、木田さん、母親からしたら、"本物"の息子でしかなかったのだ。
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