いつまでも大切な宝物【完】

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息子は、教師という夢を叶えたにも関わらず、数年後、退職し引きこもりとなった。だが、その僅か半年、自ら命を絶ってしまう。 お葬式が終わり、数ヶ月後。 木田さんはずっと、力が抜けたように、息子の部屋で1人、座り込んでいた。息子の退職理由と自殺の理由が分からず、知りたくてたまらなかった為、息子の部屋に何か、その理由を示す物が無いかと、探し始めた。すると、机の一番下の引き出しの中から、ある物を発見する。 それは、息子の日記であった。念願の教師という夢を叶え、忙しくも、楽しい日々を送っている、というような内容ばかりの中、後半になるにつれ、変わっていく。 息子は、職場の人間関係に、それほど悩んではいなかったようだが、自分の受け持つクラスの子で、1人、気になる男子生徒がいたらしい。その生徒は問題児で、喧嘩ばかりする不良だった。 息子は、そんな生徒を頭ごなしに否定したり、怒ったりせず、ちゃんと、話に耳を傾けていた。そうした事で、その生徒からの信頼を得、問題行動も減ってきてはいたのだが、ある日突然、その問題生徒が学校の外で、自ら命を絶ってしまったのだ。
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