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ある暗殺者の少女
昔々ある所に、とても栄えた国がありました。
その国は長い歴史の中でも五本の指に数えられる程の名君と呼ばれた国王と、その跡継ぎである非常に聡明な王子によって、清く正しく治められていたのです。国民もそんな国王と王子を実の親のように慕いながら、日々楽しく暮らしていました。
しかしそんな様子を妬んだ隣国の国王が、ソフィアという暗殺者を城に寄越しました。
ソフィアは酒に溺れた父親から、ビール代として裏社会に売り飛ばされた、哀れな娘でした。
しかしソフィアは生きるか死ぬかの過酷な日々を生き残り、彼女が十二歳の誕生日を迎えた頃には、国王お抱えの暗殺組織に入れる程の実力を身に付けたのでした。
そんなソフィアは難なく城に入り込み、国王とその王子を事故に見せかけて暗殺しようとしました。
もし名君と呼ばれる王と、その跡継ぎが突然死んでしまったら、この国はどうなるだろう。そんなこと、まともな教育を受けられなかったソフィアでもすぐに分かりました。しかしソフィアは、国民が可哀想だとか、そんなことを考えられませんでした。
それは命令を断ったら自分が死んでしまうから、という単純な理由ではありません。文字通り、可哀想だとか、そんな感情が頭に浮かばなかったのです。
ソフィアは過酷な毎日を生き残った代わりに、ありとあらゆる感情を無くしてしまったのですから。
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