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牢獄に入れられたクレールが、一日中とても楽しそうに笑い出すようになったのです。
クレールは牢獄に入れられてからというもの、鉄格子をガンガンと叩きながら、「ここから私を出せ」だの、「本当は自分が可愛いだけの癖に忠義ぶりやがって」だの、聞くに堪えない暴言を見張りの衛兵に向かって吐いていたのですが、急にそれが途絶え、まるで愉快な宴に出ているかのように上機嫌で過ごすようになったのです。
それからというものクレールは、牢獄にネズミが忍び込んでいるのを見ては痙攣を起こす程笑い、衛兵がくしゃみをするだけで腹を抱えて爆笑し、いつもいつも笑っているようになりました。
これは可笑しいぞと思った衛兵は、このことをある学者に相談しました。
学者は王族の身から罪人に引きずり降ろされたショックのあまり、気が狂ってしまったのだろうと言いました。
それを聞いた国王は、弟を恨む気も失せてしまいました。
国王は弟を哀れに思い、牢獄ではなく、城の塔の頂上にクレールを幽閉することにしました。そこは牢獄よりは良い暮らしが出来る場所で、せめてもの情けにはなるだろうと国王は思ったのです。
この話はいつしか城の中から漏れ、国民に知れ渡ることになりました。
人々は自らの道楽の為に国をめちゃくちゃにした男の滑稽な末路を、良い話のタネとして、大変面白がったと言います。
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