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ある狂気の王子
天蓋付きのベッドに腰かけながら、クレールは冷徹な表情でソフィアの白い喉元に短剣の切っ先をくっ付け、問いかけました。
「で、私の父と兄を殺そうとしたんですか?」
「そう。依頼だから」
ソフィアは虚ろな目で、淡々と答えます。するとクレールは不意に短剣を後ろに放り投げました。
「あっはははっ!そうですか、貴女が殺そうとしたのはあのクソ親父とクソ兄貴ですか、あっははははっ!あー、そのまま貴女に彼奴らを殺させておけば良かった!」
そしてベッドの上に寝転がり、痙攣を起こしたかのように体を震わせながら、甲高い声で笑い出しました。
「何がおかしいの」
そんなクレールの様子を見て、ソフィアは小首を捻りました。
国王と跡継ぎの王子がいっぺんに死んだら、国はめちゃくちゃになってしまいます。民として住まう者は勿論のこと、城の中にいる者もその被害を免れることは出来ないでしょう。
それなのにクレールは、そのあまりに悲惨な状況を間一髪で免れたことに安堵するどころか、「ソフィアに国王と王子を殺させておけばよかった」とまで言ってのけたのです。
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