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しかしクレールは計画を練っている間、ソフィアを猫可愛がりしました。
ソフィアを誰にも見つからないよう薄暗い物置きに閉じ込めたまでは良いのですが、そこで華美なドレスを与え、美味しいスイーツを食べさせ、まるで年老いた祖父が孫を溺愛するかのような様子で、クレールはソフィアに接しました。
何故なら彼は、王位を簒奪した暁にはソフィアを王妃にしようと、本気で考えていたからです。
ソフィアは王妃に相応しい教養など、全く持っていませんでした。そもそも暗殺者を国の王妃にするなど、決してあってはならないことです。
それだからこそ良いのだと、クレールはソフィアが王妃の冠を被った姿を思い浮かべるだけで興奮しました。
自分は兄に何かあった時の代理品にすぎない。それを受け入れざるを得ない環境で、王族として恥ずかしくない教養を厳しく学ばされ続けたクレールは、人一倍禁忌や冒険への好奇心が強い大人に育ってしまったのです。
衣食住には過不足ないが、その代わり希望も目標もない、惰性で生きるような人生に、クレールは嫌気が差していました。
王位簒奪というのも、彼にとっては退屈を紛らわす為の道楽でした。
勿論、ソフィアを王妃にするというのも、無知な娘を王妃にした方が気楽に構えられて良いだろう、何より元暗殺者が王妃になったらさぞかし面白いだろう、という悪趣味な好奇心からの考えに過ぎません。
しかしクレールが、そんな道楽や悪趣味に縋らねば息も出来ぬ程の苛立ちを感じながら生きていたというのも、また事実でした。
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