お笑い芸人が深夜ラジオをクビになる話

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 俺は喫煙者ではあるがお笑い芸人かつ深夜ラジオのパーソナリティという仕事柄、喉を痛めないためにあまり吸わないようにしている。仕事でストレスが溜まってどうしようもない時はついつい誘惑に負けて吸ってしまうが、それでも自宅以外では吸わない。  だから普段、喫煙所に近づくことはない。そのことは長年勤めているスタッフなら誰もが承知していることだ。それなのに放送直前というタイミングで声が掛かったので、怪訝に思った。  喫煙所は換気扇が回っているとはいえ、毒々しい煙で充満している。そこにこれから一時間、喉を酷使する人間を誘うだろうか? 嫌な予感がしつつもついてきてみれば、とんでもない宣告をされてしまった。 「無名だったゴローちゃんを見つけて、マイクの前で喋らせてきた俺だって、こんなこと言うのは辛いよ。でもお前は、立派に成長して今や売れっ子。テレビのレギュラーも持っている」 「売れっ子は言い過ぎですよ。レギュラーって、深夜の三十分番組じゃないですか。しかも週一の。俺が売れっ子ならテレビに出てる芸人は全員売れっ子です」
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