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「それはわかっている。お前もこの業界の人間なら、番組が終わる理由なんていくつか思い浮かぶだろ?」
「スポンサーですか」
ディレクターはご名答と頷いた。それからあきれたようにため息を吐く。
「スポンサー様が、お前を下ろしてもっと聴取率を取れる人間にすげ変えろってご所望なんだ」
「もっと聴取率が取れる人間って、誰です?」
「モリモリ安森って知ってるか。──って訊くまでもないな。お前と同期の超売れっ子芸人なんだから」
モリモリ安森。そのふざけた芸名の通り、やつは丸っこいフォルムとひょうきんなキャラで売っている。お決まりのフレーズは「モリモリ〜!」。このフレーズが子供の間で大流行して、今やお茶の間の顔だ。
小学生という芸人にとってある意味、絶大な力を持つ客の懐に入ったあいつは瞬く間に売れっ子の階段を駆け上がって行った。
世間では面白いだなんのと言われているが、俺は一切認めていない。同い年でデビューも同じという偶然から一方的にやつをライバル視しているのだが、絶対にあいつより俺の方が面白い自信がある。現に無名時代は俺の方が、客の受けが良かったもの。
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