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「安森はダメっすよ。あいつは所詮、お子様芸人だ。深夜のノリには合いません。深夜ラジオのリスナーっていうのは、綺麗な笑いを求めてるわけじゃない。時には下ネタやニヒルなこと言って喜ばせないと。あいつにできますか!」
「お前よりこの業界、長いんだ。そんなこと分かってる。でも先方はいたく安森にご執心の様子で、希望が通らないなら提供を降りるとまで言っているんだ」
ディレクターが吐いた煙がゆらゆらとのぼり換気扇へと吸い込まれていく。まるでそれは、今ラジオ局から追い出されようとしている自分みたいだなと思った。
「自分が苦労して育てた子どもより、他人の優秀な子どもの方がいいんですか! 俺のこと切り捨てるつもりですか!」
俺の心からの悲鳴に、ディレクターは顔を歪める。そしてそれを打ち消すように頭は振った。
「俺はディレクターである前にこのラジオ局の社員なんだ。会社の利益を阻害するわけにはいかん。それに切り捨てるんじゃない。子どもはいつか家を出て自立する。今がその時なだけだ」
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