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「ちょっと散歩してくる」
僕トーマスは、キッチンカウンターの向こうの母に声をかけた。
「早く帰ってくるのよ、最近ちゃんと宿題もしている?」
「してるよ、今だって勉強に疲れたから息抜きの散歩だ。いいだろ?」
母さんは、はぁと大きく息をつき首を左右に振った。
「…とにかく、早く帰ってくるの。物騒な事件も最近増えてるしね」
「分かった分かった」
ドアを出て、一番近くの雑貨屋でコーラとポテトチップスを買った。
公園でただぼんやりと食べるつもりだ。
公園と言っても、何もない、だだっ広い運動場だ。
端の方に錆びたベンチが数個並んでいる。
一番右のベンチに座って、コーラとポテトチップスを食べながら風景を眺める。
何にもない所だけど、自分よりも小さな子供がサッカーをしていたり、かけっこをしているのを見るのは可愛かった。
持っているポテトチップスとコーラが無くなれば、現実の世界に帰って、再び勉強しなければならない。
そんな事を思っている間にポテトチップスはカラになり、コーラも一口微妙に残っているだけとなった。
その一口を飲み上げ、目の端で公園の端を偶然見た時だった。
自分がいた気がした。
背の高さも、金髪の色も、お気に入りの靴も。
「おい!」と声をかけようかと迷って下を向いた。
そうだ、声をかけてみよう、もしかするといい友達になれるかも!
勢いよく上を向いたが、そこには誰も居なくなっていた。
……幻か?
走って隠れられる場所などない。
……まぁ、いっか。今日は面白いものを見た」と思うことにしよ。
家に帰り、「ママ、面白いものを見たよ、まるで自分そっくりの人間がいたんだ」と声をかける。
「いやだ、気味が悪い!それってテレビで観たことあるわ、ドッペルゲンガー現象ってやつじゃないの?」
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