自分は誰なのか何なのか

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*** その次の日も。 いつものルーティンを終えて、家に帰った。 今日はニセトーマスは来なくて、安心した。 思えば、近くで見れば見るほど僕にそっくりで、そんな事あるんだなと。 でも、もう見たく無い。 いつもならママに「ただいま」と声をかけるけど、またいつものように「宿題は?」「勉強しなさい?」とキャーキャー言われるのが面倒で、2階へそっと上がることにした。 自分の部屋につくと、窓を開けて外を見る。 クラスメイトのアンディとルーカスが僕に気がつき、手を振ってくれた。 僕も片手を上げた。 「ただいま!」 その声に僕は目を大きく見開いた。 僕の声だ。僕の声が下から聞こえる! ヤツだ! 1階のママに会っているんだ。 危ない!すぐに下に降りなくちゃ! しかし、ニセトーマスは、ママの話に「分かってるよ!すぐ、勉強する」と言いながら、階段を上がって来る足音が聞こえた。 1階に降りるのをやめ、その場で頭を抱えた。 どうしよう。 自分がこの家に2人いるとバレたら殺されるかも知れない。 何故かそう思った。 僕は咄嗟にベッドの下に潜り込む。 ちょうど僕の足先がベッドに隠れた時に、ドアが開いた。 僕と同じスニーカーが部屋に入ってくる。 ハッハッと息が漏れそうなのを、ゆっくり手の平を口に当てて押し殺した。 手に汗が滲んでくるのが分かる。 奴はベッドに腰掛けた。 あぁ、どうしよう。 僕は何て間の悪い…ママに声をかけておくべきだった。 いや、もし、声をかけていたとしたら、反対にママが危ない目にあう所だったかも知れない。 どうやって逃げるか、で、コイツは一体何をしたいのか…… 考えが全くまとまらない。 隠れるんじゃなくて、戦えば良かったのか、でも、どうやって? 僕の部屋には武器になるような物が1つもないじゃないか。 あぁ、戦うより、もう隠れてしまった。 一旦、ニセトーマスが部屋を出ていくのを見計らって、僕もここから逃げる事を考えよう。 そうしよう。 「やぁ、トーマス」 「!!!」 ニセトーマスがベッド下を覗き込んでいる。 何も考えられない一瞬。でも、その一瞬が長く感じた。 ニセトーマスの微笑んでいるのに、全く笑っていない瞳。 その目が異常に恐怖に感じた。 「怖がりやのトーマス。隠れるなんてしなくてもいいだろ。僕たち友達みたいなもんじゃないか」 「な、なにを…っ!」 ニセトーマスが、ベッドから降り、再び僕を覗き込む。 そして唇の弧を大きくしながら、僕に手を差し出す。 「やめろ!触るな!」 「騒ぐなよ、ママが僕たちを見たら驚くぞ。そしたら、それこそ何かしなくちゃいけないかも知れないのに」 「!!」 「フフッ…冗談だよ。何もしないさ、なーんにも。さ、そこから出ろ」 優しく手をもう一度差し出され、僕は震えながらその手を握った。 「怖がり屋のトーマス。今度はベッドで眠れ」 「えっ…」
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