14.謎を部屋

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14.謎を部屋

 14.謎の部屋  開店の十時になるのと同時に伊勢間光義と日ノ下美緒の二人はフイルムを現像して貰う為に写真屋へ乗り込む。  直ぐに現像してもらい一枚の写真を見た光義の目に映る物は、白いワンピースを着た(半透明化した)女性の背後に写る謎のおばさんの素顔だった。  初めて見る謎のおばさんの姿に光義はこのおばさんこそが九尺様を操る神憑きだと直ぐに認識すると、その素性をどうやって調べたらいいのかを真剣に考える。だがそんな光義の苦悩は日ノ下美緒の思わぬ言葉で助けられる事となる。  なぜなら写真を見た日ノ下美緒は写真に写るそのおばさんの事を知っていたからだ。  なんでもそのおばさんはゴミ集めが趣味なトラブルメーカーらしく、身なりが汚い事からよく通りすがりの小学生達に馬鹿にされ、からかわれていたのだ。  そんないたたまれない光景を何度か見た事がある日ノ下美緒はそのおばあさんにはなるべくかかわらないように避けていたが、大体の住所を知っていた事で急遽話の流れが大きく変わる。  一枚の写真から謎のおばさんの素性と家を知る事ができた伊勢間光義は日ノ下美緒の案内で公園から少し離れた市内の近くにある古びた民家を訪れる、そして今に至る。  大量のゴミと悪臭を放つその家はまさにゴミ屋敷で、訪れた伊勢間光義と日ノ下美緒の歩みを躊躇させる。  決意を胸にここまで来たにも関わらず実際にこの惨状を見た二人は物質的なゴミの量と精神的な嫌悪感でつい全てを投げ出してしまいそうだ。  だが九尺様の手により、いなくなった子供達や仲間たちを助け出す為、二人はついに九尺様を操る神憑きのおばさんの自宅に足を踏み入れる。  最初は呼び鈴を鳴らし、声を掛け、玄関のドアを何回もノックする伊勢間光義だったが、家の中に誰もいない事がわかると、チャンスとばかりに黙って不法侵入を試みる。 「よし、玄関に鍵はかかってはいないようだ、これなら入れる」  ゆっくりと玄関のドアを開け、再度だれもいない事を確認する。  ギィィィィィ。 「家の中にはだれもいないようだ、なら今がチャンスだ。この留守を利用して謎のおばさんの素性や犯行に至る動機を暴いてやる。その全てを知る事で九尺様の弱点が見えて来るはずだ。いくぞ、美緒ちゃん!」 「いいんですか、人の家に勝手に入って……これって不法侵入じゃ……」 「いいんだよ。相手は九尺様を操る狂った神憑きの人だし、話し合いが通じない人かも知れない。なら本人がいない内に家の中に入っていろんな情報を集めた方が安全だろ。それに運が良ければ九尺様をこの世に体現させているご神体が見つかるかも知れないし、いなくなった人達の消息も掴めるはずだ」 「わかった、なら一緒に九尺様を封じるすべを探しましょう。期待しているからね、光義お兄ちゃん」  意を決した二人は家の中に入るとゴミが乱雑する廊下を通り抜け、人がどうにか一人通れるくらいの道に導かれるような形で一番奥の部屋へと招かれる。その部屋の中央にある空間だけはなぜか綺麗に整頓されており、ゴミの壁に囲まれた異様な状況が部屋の中をより一層不気味にさせる。 「まだ昼間だというのにゴミの壁のせいで日差しが少ししか入って来ないぞ。これじゃ暗くてよく見えないぜ」 「それに密閉されているせいかなんだか暑いですね。匂いも酷いです」 「とにかくだ、家主が帰って来ない内に、家主に関する情報と、九尺様の謎、そしていなくなった人達の情報を探すぞ」  光義は一目散に木製の机に駆け寄ると縦向きに三つ備え付けられてある引き出しを上から順番に探し始める。  いつ家主に見つかり九尺様をけしかけて来るか分からないので、光義は手際よく引き出しの中をまさぐっていく。 「薬の紙袋がある、どうやら精神科の病院に通院していたようだ。名前は『木内さえ』七十六歳か。それと週に三回老人ホームにあるディサービスを利用しているようだ。市の職員やケアマネジャーと呼ばれる職員が来て、色々と書類なんかを置いて行っているようだ」 「老人ホームに入所する誘いの書類か何かでしょうか?でもあの人の場合、言っちゃ悪いけど、精神科に入院して欲しいです。なにせ暴言も酷いし危険なおばさんでしたから」 「話を聞く限りじゃ、小学生の子供たちとはかなり犬猿の仲だったようだな。小学生の人数も多いし世間体的に手を出しにくいというのなら、九尺様の力に頼って逆恨みを実行しても別に可笑しくはないと言う事か。その可能性を知る事のできる決定的な証拠が見つかればいいんだが」 「そうですね」 「それにしても……老人ホームか。名前は確か……。」  時間を気にする中、懸命に証拠となる品を探す光義は一番下の引き出しに仕舞ってある一冊のノートを見つけ出す。  不気味な雰囲気に呑まれながらも光義はそのノートを手に取ると、ページを開き中を確認する。
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