[02]私

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 母と特に会話を交さず食事が終わった。食器の音だけがしている。 「明日順位発表なの?」  席を立とうとしていた瞬間に言われた。 「うん」 「いい結果だといいわね」  いつもより口数の少ない娘を心配したのだろうか。少し嬉しかった。 「大丈夫よ。香世は絶対1番なんだから」  前言撤回。  この女が心配していたのは私の成績だ。わかりきっていたことだが、少し悲しくなった。もし私が馬鹿だったら、口もきいてくれないと思う。  階段を上がった。永遠に部屋に辿りつけない気がした。
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