恋の媚薬

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「実際に惚れ薬があったらいいのにね」  仕事帰りに寄った創作居酒屋で、同期で親友でもある蜂谷(はちや)あかりがとんでもないことを言い出した。ジョッキの中身が少なくなってきたからか、呼び出しボタンを押している。 「あはは、あかりってば酔ってる? 急にどうしたの?」  私もビールを一気に呑みほして、あかりと同じく中ジョッキを注文した。 「酔ってるように見える? だって、香帆(かほ)和泉(いずみ)のこと好きだって一年以上も言ってるからさー。親友には幸せになってもらいたいじゃん」  和泉とは私達と同期入社の男性社員。  入社して以来、私がずっと片思いしてる相手でもある。  フルネームは和泉蒼汰(いずみそうた)。  容姿はもちろん、声もタイプだった。 「それはありがとう。でも、あったとしても使うのは嫌だな」 「何で? 確実に好きになってくれるんだよ?」 「だって、出来ることなら薬に頼らないで好きになってもらいたい」  自分がいつの間にか飲まされてたらと考えると怖いし、そんなもの好きな人に飲ませられないよ。 「それはそうだけどさー」  あかりがスマホをいじりだしたのを眺めながら、届いたばかりのビールを流し込む。  いつになっても告白しないからこんなこと言われたのかも。同じ職場だし、ダメだった場合を考えると怖くなっちゃうんだよね。  こんなこと言ってたら何も変わらないのも分かっているんだけど、いざとなると勇気が出ない。
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