21本のバラの花束

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恋は盲目というけれど、天才建築家で中堅ゼネコンの社長が天性な職業を捨てて独り立ちまでかなり時間を要する医師にジョブチェンジしようとするなんて辞めて欲しい。 「神宮寺美愛先生と結婚する事ができるなら、俺はどんな苦労でも耐えてみせる。神の手を持つ心臓外科医に絶対になるから俺と結婚してくれ」 初瀬社長なら神の手を持つ心臓外科医になれそうだけど、10年も待てない。 後期研修を終えたら深刻的な医師不足のシバハートクリニックで共に勤務してくれる医師とお見合いでもして早急に結婚したいと思っている。 「シバハートクリニックの後継者は精神科医をしている兄だろ。美愛先生が継ぐわけじゃないから結婚相手は医師じゃなくてもよくないか!!」 医師として勤務はできても後継者じゃない私は都合がいい勤務医でしかない。 後継者の兄にいいように使われてる働き蟻と働き蜂でしかないという事に気づいた。 「確かにそうですね。わかりました。お互いの事を深く知らずに結婚は無理なので、結婚を視野に入れたお付き合いをさせて下さい」 父と母から実家クリニックに勤務し続ける事を強要するような事を言われた事はない。 将来の職に関しても、『やりたい仕事につきなさい』と言ってくれていた。 兄にいいように使われてきた事に気づき、実家クリニックに対する呪縛から解かれた。 これからは兄のいいなりにならず、自由に生きようと心に決めた。
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