天才若手建築家

2/3
前へ
/32ページ
次へ
「初瀬工コーポレーションの健康診断ね」 契約している企業の社員とご家族の健康診断。 毎日150人前後が受けにきて、2人の医師が診察している。 「今日、天才若手建築家の初瀬結翔が健康診断受けに来るって!!」 「本当!!俳優いや韓流アイドル並にイケメンなんだよね。生で姿を拝めるなんて、幸せだ!!」 若い看護師達が来院する患者の名簿を見て、キャーキャー言ってる。 オフィスが建ち並ぶ新橋に近い位置にある健康診断が受けられるクリニック。 大企業とも契約をしていて、婚活世代の若い看護師達は運命の出会いを待ち望んでいる。 午前9時になり、健康診断を開始する。 患者1人1人に問診をし自覚症状の有無を確認後、視診聴診触診。 見落としがないようしっかり診療する。 「甲状腺が腫れてますね。風邪をこじらせました?」 「いいえ」 「検査受けた方がいいかもしれませんね。空気が乾燥している季節なので腫れやすい時期ではありますが。後は問題ないです」 休む暇なしで看護師が患者を診察室に入れるから、疲労感が半端ない。 「初瀬結翔さんですね」 健康診断問診票の確認で今朝看護師が話していた会話の内容を思い出し、患者の顔を確認する。 「お久しぶりです。以前、助けて下さりありがとうございました」 「あ、……あの時の」 10ヶ月前、小学生にカッターナイフで腹部を刺された男性が目の前にいた。 「お元気そうで何よりです。何か気になる自覚症状はありますか?」 端正な顔立ちをしたした男性。 思わず見惚れて診察を疎かにしそうになるもなんとか平常心を保つ。
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!

163人が本棚に入れています
本棚に追加