12本のバラの花束

2/3
前へ
/37ページ
次へ
“深夜時間に仕事を終えるのは難しいので、明日、12時45分にしばハートクリニックの健康診断センターに来てくれませか?レントゲンを撮ってカッターナイフのかけらがないか確認します” 年末になり、健康診断センターは閑散としてる。 昼休憩時間に多忙な友人の診察をすると言って、場所を借りた。 「神宮寺先生、ご無沙汰しております」 赤い薔薇をメインに霞草、ガーベラに桔梗が入った花束を持って、究極イケメンが無人化した健康診断センター内に入ってきた。 「あ、……ありがとう。時間ないから先にレントゲン取ろうか」 やってはいけない秘密裏の診療を行ったため、診察内容は隠さないといけない。 レントゲン写真には異物は見えない。 傷跡は残ってはいても腫れたりしこりがあるとかもなく、完治していると思われる。 「痛みだけ後遺症で残ったのかも。仕方がないよ。小学生にカッターナイフで刺される方が悪い。私はできる範囲で治療した」 外傷治療は研修先の病院で毎日のように携わってるから慣れてる。 カッターナイフで刺された傷ぐらいなら1人で対処できる自信はあった。 「……痛みはないです。神宮寺先生と2人きりで話したくて嘘をつきました。ごめんなさい」 多忙過ぎてまともに休む時間がないのに時間と場所を用意したのにと、少しイラっとなる。 「神宮寺美愛先生、結婚前提で俺と付き合って下さい。俺の人生、一生かけて、神宮寺美愛先生に尽くし恩返しします!!」 診察室で向き合って座っていたら、いきなり手を握られプロポーズされた。 花束を持って診察にきた初瀬結翔。 12本の赤い薔薇は“私の妻になってください”という意味と、“愛情・情熱・感謝・希望・幸福・永遠・尊敬・努力・栄光・誠実・信頼・真実、これらのすべてをあなたに誓います”という意味が込められている。
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!

171人が本棚に入れています
本棚に追加