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父はOKIという大手電機メーカーの社長で、以前より多忙な生活を送っている。
仕事で海外へ行くことが多かった父だが、母が生きていた頃は、時間があれば帰宅して、凛々子の相手をしてくれる優しい性質だった。
だが、真理子が家に入ってからというもの、極端に家に寄りつかなくなった。
三ヶ月に一度、帰って来るか来ないかという感じで、帰宅しても一泊していくだけ。
不在がちになった父のことを、真理子は「お前のせいであの人が帰って来なくなったのよ」と言う。
どういうことなのかと視線で問うと、お前の顔は死んだ母親にそっくりで見たくないのだと言う。
嘘だと泣けば、皮肉な笑みを浮かべた真理子に「あの人がお前を気に掛けることがあって?お前が憎いから話もしないでしょう」と言われてしまう。
義母の言う通り、父は凛々子を見ると辛い表情を浮かべて、積極的に話かけてくることがなくなった。
父は帰宅しても、すぐに書斎に籠ってしまうのだ。
当時、十二歳の凛々子は、ついに父からも愛されなくなってしまったのだと嘆いた。
本来、凛々子は明るくて笑顔の絶えない少女だった。
輪郭と目鼻立ちの整った顔は、透き通るように真っ白で、艶やかで真っ直ぐな黒髪は人形の様だと褒められ、周囲から愛されてきた凛々子。
父は母に似て美しいと、よく口にしては凛々子の頭を優しく撫でてくれた。
だが、真理子からの言葉の暴力により、自分の意識は愛されていた存在から、誰にも愛されない憎い存在へと塗り替えられていく。
「お前なんて生まれてこなければよかったのに」と何度言われたかわからない。
「美波はいい子なのに、お前は気味が悪い」と妹と差別する言葉を投げかけられることは日常茶飯事だった。
義母の態度を見て育った美波も同じく、いつしか凛々子をバカにするような態度を取るようになる。
優しかった使用人たちも、真理子を恐れてか、凛々子に構わなくなった。
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