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家の中で凛々子に積極的に関わってくる者はいない。
その上、義母は凛々子の顔を見る度に、あからさまに顔をしかめ、意地悪な言葉を浴びせてくるので、学校や習い事のない時は、ほとんどの時間を部屋に閉じこもり読書をして過ごすようになった。
父の不在時は、食事も真理子と美波と一緒に食べることはできなくなる。
凛々子の顔を見ると食事が不味くなるからと、義母から部屋で取るように言われ、使用人が運んでくる食事を一人で食べるようになったのは、もうかなり前のことだ。
黒い髪が浴槽に浮くのが気持ちが悪いからと入浴を禁じられ、シャワールームしか使用できなくなったのも、もう何年前だったか。
洋服や持ち物は与えられるが地味なものばかりで、好みのものを身につけることも許されない。
母が生きていた頃に両親から贈られたものでさえ、美波に奪われてしまい、残ったものは三歳の誕生日に買ってもらったクマのぬいぐるみだけ。
それも古くなって色褪せたため、美波にとって魅力的に映らなかっただけのこと。
母が生きていたなら、今頃自分は違っていただろうか。
優しかった母を思い出して、幼い頃は毎日のように泣いたが、誰も助けてくれない。
凛々子は次第に感情を殺し、聞き分けのよい自分を演じるようになった。
一日一日が辛く過ぎていく。
まるでいない者のように扱われ、殺風景な部屋に閉じこもる毎日が積み重なることで、凛々子の心は疲弊していく。
外に出ると少しは気が紛れるが、学校と家の往復しかない自分の世界は狭く、常に息苦しい。
――早くここから抜け出したい。
誰にも気遣うことなく、一人で暮らしたい。
いつしかそればかり思うようになり、凛々子は自立できるように、とにかく勉学に励むようになった。
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