いまさらもうまにあわないのか

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 学校問題の原因は誰にあるのだろうか。  多分私たちのクラスでは特定は難しいと思う。だって誰かでみんながいじめを育てるようにしていたから。私も。  きっかけなんて些細なことに過ぎない。単純に気の弱そうな子がいたから。そのくらいでしかないんだろう。多分そんなもの。彼には申し訳ないが。 「痛いから」  そんな声が聞こえてもクラスの誰の気にしてない。もちろん私もで、いじめられっ子といじめっ子はずっと存在していた。 「うるさい! このくらいで喚くな」  彼らだけの問題だったら良かった。それまでなら。  でも、この日はちょっと違っていた。そのほかのクラスメイトたちも退屈していたのだろう。いじめの現場を眺めてる。  それに気付いたいじめっ子は周りを見渡すと、いじめられっ子の彼をヘッドロックしたまんま「今なら叩き放題だぞ!」なんて話す。 「やめな!」  そんな声が、響かない。誰からも。  私もどうしようかと思いながらも誰もいじめっ子の彼に文句を言えなくて黙っている。 「じゃあ、軽く」  いじめっ子が楽しそうにして、その取り巻きも笑っているので調子につられたのか、雰囲気を察知したのかある程度真面目な人が言う。そしてペシペシとくらいに叩いた。  クスクスと言う笑いが、真面目な彼が叩いたことによって湧いてしまう。 「なら、俺も!」  そう応えたのはクラスのお調子者。  彼は冗談であったのだろうが、容赦もなくペシンと軽やかな音が響くほどに叩く。 「良い音させるな!」 「今のはよかったろ」  いじめっ子とお調子者がにこやかに笑う。それにつられて他のクラスメイトたちも声をあげて笑い始めた。  良くない状況に進んでいるのはわかっていた、けど「やめなさい」という言葉は重い正義という足かせがあって私からは言えない。  そしてクラスで一番真面目な女の子もその言葉を言わないでにこやかに笑っていた。まだ冗談の範疇といえたのだろう。だけど、それがノーリターンポイントだった。 「次は居ないのか? ホラ。希望者は並べ!」  いじめっ子の男の子が言うと、既に冗談で盛り上がっているクラスの面々は列を作る。男子だけでなく、女子も加わって、段々と参加しないのが取り残されるほうになっている。  かと言え誰もが暴力を喜んでいる訳じゃなくて、ほとんとの人がペシと軽く叩く程度。その辺はわきまえていた。  それでも多くの人が並ぶと、群集心理と言うものがはたらくのだろう。迷っていた人間も列になり、残りは僅か。 「私たちも、並ぼうか」  少し困った声で言うのは私の友達で、この子も気が弱い。  だけど、私はさっきの思い正義を彼女になら表せられる。 「駄目だよ。これはいじめでしょ?」  彼女の前に立ちふさがるように振り返って小さな声で話す。  違う。私はいじめの現場を見れなかったんだ。そして声は他の人に聞かせられないから。 「でも、あの子。怖いんだよ。仲間外れになっちゃう」  いじめっ子の彼を見た彼女は自分が被害にあわないように語る。これはいじめから自分を守るための逃げだ。それが私の心にも落ちる。  怖いのは私も一緒だった。「仲間外れ」のその言葉に震えてしまう。振り返ると、もう残されているのは私たちくらい。  悩んでいる時に「どうしたんだ? 全員参加しろよ!」なんてさっきとは違ったことをいじめっ子の彼は話している。 「ホラ、急がないと」  手を引く友達の彼女を振りほどくことは私にはできなかった。  さっきの「全員参加」の言葉に迷っていた人が並び始める列の後方に私も並ぶ。良くないのはわかっている。それでも怖い。  列は段々と進んで私の順番になる。迷わないで軽く叩いて今の状況を胡麻化そう。  近づくといじめられっ子の彼は嗚咽と一緒に涙を流している。ちょっと情けないと私も思う。男の子なら言い返して、喧嘩でもすれば良いのに。  順番が訪れ私はとても軽く叩くと言うほどの叩き方ではなくフリにする。
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