1.邪魔なんだけど

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1.邪魔なんだけど

 オレ、三上 凛太(みかみ りんた)、医学部の学生。バース性はΩだ。  十九歳にして、ちょっと……いやかなり、いかがわしい店の門をたたくか迷っている。  ……利用するんじゃない、働く方で。  Ωのそういう店か……。  ――なんか、給料とか、高そうだよね。  でも、赤ちゃんとかできたらそれは困るな……。まだまだ勉強したいことたくさんだし。  んー。やっぱりやめるか……。くるっと店に背を向けて、歩き出そうとして、いや、待てよ、と止まる。  でも、オレ、ヒートもたまにしかこないし、ヒートの時を避ければ、妊娠率は下がるから大丈夫かな……。  いや、でもなぁ……。  まあでも、避妊しないと店だって困るだろうし、そこだけは、ちゃんと守ってくれたりするかな。  ほんの短い時間を耐えて、他の時間は勉強出来るなら。  別にオレ、そこまで、綺麗で清く居たいとか、思ってないし……。  ――オレは、医者になりたい。でもって、あの人のお金はどうしても使いたくない。  Ωだからって諦めたくないし。やっぱり、他で働くよりも割、いいかな。本番がないなら……?? って、いまいち、何をするかも良く分かんないんだよな。この看板じゃ、具体的なこと何も書いてないし。  利用したことないし、いままで興味も無かったし。  ――どんなことするのか、話だけでも、聞いてみるか!  くる、と踵を返して、店の方へ一歩、足を踏み出そうとしたところ。  なにやら、すごい、高身長の人が、前に立った。 「あ、すみません」  そう言って、右によけようとしたら、その人も右に。オレが左に足を出したら、その人も左に。  偶然とかじゃなく、絶対わざとだ。何、この人。オレのこの勢いを、止めないで欲しいんだけど。 「ねえ、君さ」  なんか――すごく聞き心地の良い声。鈴が転がるような、なんて描写が、咄嗟に頭に浮かんだ。  軽やかで、心地いい声。そんな風に思ったのは、初めてかも。今の今まで邪魔されてムカついていたのに、ほっと気持ちが緩んで、その顔を見上げた。  ――おお。  超、イケメンさんだ。  こんなイケメンさんは、見たことが無いかもしれない。  というか、そもそも、人の顔の良し悪しにはそんなに興味がない。  まあこの人は、そんなオレにも、目にとびこんでくるくらい、派手なイケメンさんだけど。
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