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罠①
「汐野さん、3番テーブルオーダーお願い」
豆から挽く本格珈琲が人気の街中のカフェ。
ラテアートがSNS映えすると話題になって、休日のこの時間はいつも若い人で賑わっている。
混んだ時間帯、店長に言われたテーブルへ早足に向かえば、見えてきた客層に足がすくむ。
派手な容姿の男3人組。ゲラゲラと大きな声で喋っていて、若干他のお客さまのご迷惑になっている。
(やだなぁ…)
それは、単に面倒だからではない。
「、ご注文っ…おうかがいします…っ」
なんとか業務的な台詞を言い終え、彼らと対峙。
ハンディを見るふりをして極力目を合わせないようにしていれば、感じる視線。途端に、冷や汗が噴き出る。
「お姉さん、可愛いね」
「、っ…」
話しかけられてしまい、嫌でも彼らの方を見なければいけなくなる。
顔を上げれば、にやにやと歪んだ口元が3つ。
「あの、ご注文は…」
「んー、じゃぁ、お姉さんの連絡先ください」
「……それは…ちょっと…」
顔に視線が向けられる。視線が少し下がる。そこで止まる。
もう、ここまでがテンプレート。
どこを見られているかなんて、いやでも分かる。
(…めっちゃ胸デカくね?)
(思った。Eは確)
こそこそとそんな会話が耳に入る。小声なら、もっと聞こえないようにして欲しい。
(…あぁ…嫌だ…)
ぎゅ、っとハンディを握りしめる手が震える。
早く戻りたいのに、注文してくれないから戻れない。
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