罠①

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「お客さま、どうされました?」 そこで、間に入ってくれたその声。 涙目で顔を上げれば、同じくここの社員である1人の男が可愛らしい顔でにこやかに笑ってそばに立っている。胸の名札には、“真鍋”の文字。 「汐野に何か不手際でもございましたか?」 どこか圧力を感じるその笑顔に、顔が引き攣る男性客3人組。 「え?…あ、いや、別に」 「そうですか。ご注文はもうお済みで?」 「いえ、まだです…」 「では代わりにお伺いいたします」 慌ててメニュー表を見始める彼ら。その男性社員に横目を向けられ、戻るように合図される。 慌ててハンディをしまい、ありがたく奥に引っ込ませてもらった。
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