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道なき道を突き進み、いよいよ迷子になってしまったと思い始めた時、森の中にポッカリと空いた黒い入り口が見えてくるのだった。こんなジメジメしたケツの穴みたいな場所に隠れるくらいなら、町に残ってデッドウィークに参加したほう楽じゃないかと赤津正樹は思いながら、ポケットの中の小さなタブレットを取り出すと電源を入れた。
「それ、なんですか?」和田哲平は覗き込んだ。
「探知機さ。これを使うと武尾町の住民の位置情報を把握できる」
モニターのマップには人間の位置情報が緑色のランプで表示されていた。町には無数の緑色の点が集まっているが、郊外の森の中に1つだけ緑色の点があった。自分たちの2つの点は、そのすぐ近くまで接近しているのだった。
「初めからそれを使っていたら、もっと早くに発見できたじゃないですか」
「最初のうちはこういったツールを利用しないで、自分の感覚を鍛えたほうがいいんだよ。だからあえて使わなかったんだ。なんか文句ある?」
「いいえ……」
和田哲平の顔は納得していなかった。探知機がポケットに入っていることを今まで忘れていたんじゃないかと疑っていた。散々遠回りして鍛えられたのは、感覚よりも足腰じゃないかと愚痴りたかった。
「それって腕の中に埋め込まれているマイクロチップに反応しているんですか?」
「そう。警備隊のみ使用が許されている。銃もそうだけどさ、仕事道具を面白がって家に持ち帰ったら罰せられるからな。気をつけろよ」
「はい……探知機を触ってみてもいいですか?」
「ああ、いいよ」
和田哲平は受け取ると初めて文明と触れたかのように不思議そうに眺めていた。
「僕には支給されないんですか?」
「されるよ。お前はまだ訓練生だから信用が足りないだけで、そのうちもらえる」
「探知機で逃げた人の名前は分からないんですか?」
「技術的には可能らしいけど、分からないように伏せられているらしい。逃亡犯が警備隊員の知り合いだった時に見て見ぬふりするかもしれないからね」
「わざと逃したらどうなるんですか?」
「わざとじゃなくても町民が逃げ切った時点で俺たちは失職するよ」
「キビシイですね。じゃあ逃亡犯を殺さずに説得して町の中に戻すのはアリですか?」
「え?」赤津正樹は和田哲平の顔を覗き込んだ。「なんでそんな事を訊く?」
「すみません」
「見つけ次第、撃ち殺せと言ってるだろ」
「はい」
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